【警鐘】「パイロット個人の責任」はもう古い。米FAA「Part 108」が突きつける、ドローン事業者の”組織力”という現実

米国連邦航空局(FAA)が、目視外飛行(BVLOS)の恒久的なルールとして「Part 108」の制定を進めている。 日本の多くのドローン事業者は「アメリカの新しいルールか」と対岸の火事のように見ているかもしれないが、この本質を知れば決して呑気なことは言っていられなくなるはずだ。

1. 個人の責任から「組織(企業)の責任」への大転換

これまでの米国のルール(Part 107)では、事故や違反の責任はすべて「操縦士個人(Remote Pilot)」が負っていた。日本の現行制度も基本的には同様の構造である。 しかし、Part 108では責任の所在が操縦士個人から「運航組織(Operator)」へと完全にシフトする。一人の操縦スキルに依存するのではなく、企業としての安全管理体制(SMS)が機能しているかが問われるのだ。

2. 「運航管理責任者(Operations Supervisor)」の氏名明記を義務化

ここで極めて重要なのが、Part 108において「Operations Supervisor(運航管理責任者)」という役割の設置が明確に求められている点である。 驚くべきは、この運航管理責任者の「氏名」を、許認可(承認)の際に明記することが義務づけられるという点だ。 「資格を持ったパイロットを現場に派遣すれば終わり」ではない。国に対して「この者が全体の安全と運航を統括する責任者である」と、名前を出して申請しなければならないのである。

つまりは、弊社がずっと以前から提唱している「運航管理者の設置が各事業者に必要となる時代」がいよいよ現実味を帯びてきた、ということである。

3. 「個別承認」から「システム連携」への移行

これまでBVLOS(目視外飛行)は個別の特例承認(Waiver)に頼っていたが、Part 108はこれを標準化しプロセスを簡略化する。 その代償として、機体への衝突回避技術(DAA)の搭載や、運航管理システム(UTM)との連携が強く求められる。つまり、属人的な見張りから、システムベースの「確実な回避」へとフェーズが変わるのである。

日本の事業者が直視すべき現実

Part 108は、単なる目視外飛行の緩和ルールではない。ドローンを「個人のラジコンの延長」から、「組織によって厳格に運用される航空機」へと引き上げるための、航空業界としての強烈なメッセージである。 航空業界の歴史が示す通り、日本の法規制も遠からずこの「組織的責任と、名前を背負った運航管理者の配置」という世界標準に追従していくことになるだろう。

その時、あなたの会社には、自らの名前を明記して安全管理を横断的に統括できる「運航管理責任者」が育っているだろうか? 個人スキルや許可書のアリバイ作りにあぐらをかいている事業者は、早晩、この業界から淘汰されることになる。