【過信の罠】「フェイルセーフ設定」をデフォルトのまま飛ばす恐怖。そのRTH高度、今日の現場に合っているか?

前回の記事で、電波が途絶した際に「操縦を放棄してRTH(自動帰還)を待つことの危険性」について触れた。 しかし、現場にはさらに恐ろしい爆弾を抱えたまま飛ばしている操縦者が山ほどいる。 それが、機体の命綱であるはずの「フェイルセーフ設定」を、購入時のデフォルト、あるいは前回の現場の数値のまま放置しているという罠である。

RTH高度」の盲点:その高さで本当に帰ってこられるか?

電波が完全にロストした際、ドローンは設定されたRTH高度まで上昇し、ホームポイントへ直線的に帰還する。多くの操縦者が、この帰還高度を「なんとなく」50mや100mに設定したまま飛ばしている。 しかし、今日の現場とホームポイントの直線上に、それより高いクレーンや送電線、あるいは山林の稜線があったらどうなるか?

答えは明白だ。機体はあなたのもとへ帰る途中で全速力で障害物に激突するか、もしくは障害物を検知した段階でRTHをやめて空中で停止してしまう。どちらにせよ、機体は自力で帰還できなくなる。

RTH高度は「現場の最も高い障害物+十分な安全マージン(クリアランス)」に設定するのが絶対条件である。現場が変われば障害物の高さも変わる。毎回設定を見直さない操縦者は、運任せのロシアンルーレットをしているのと同じだ。

「なら、高く設定しておけば安全」という浅はかな考え

では、障害物を避けるためにRTH高度をむやみに高く設定しておけば安心かといえば、そうではない。 何も考えずにRTH高度を上げすぎると、今度は地表や水面から150m以上の空域に進入してしまい、航空法第132条の851項第1号違反に該当する恐れがある。 安全対策のつもりが、無自覚に重大な法令違反を引き起こすトリガーになり得るのだ。

「上昇して帰還」が常に正解だと思っていないか?

フェイルセーフの挙動は「RTH(上昇して帰還)」だけではない。環境によっては「ホバリング(その場で待機)」や「着陸」を選ぶべき現場もある。

  • 橋梁の下や屋内でのロスト GPSが入りにくい構造物の下でロストした際、デフォルトの「RTH」のままにしておくと、機体は帰還しようと急上昇し、橋の裏側や天井に激突して墜落する。 このような現場では、設定を「ホバリング」や「着陸」に変更しておくのが鉄則である。

プロの運航管理とは、最悪を想定する「事前準備」である

「最新の機体だから、障害物センサーが避けてくれるだろう」という過信は捨てるべきだ。RTH中のセンサーは、逆光や細い電線、葉の無い枝までは認識できないことが多いし、前述の通り検知して停止してしまえば帰還のプロセスは頓挫する。

フェイルセーフは万能の魔法ではない。 フライト前の環境確認で障害物の高さを把握し、万が一電波が途絶したときに「機体がどう動くか」を現場ごと、さらには法令の範囲内で最適にプログラムしてやるのが、操縦者の本当の仕事である。

次回のフライト前、プロポの画面を見る時、自分に問いかけてほしい。 「今のこのフェイルセーフ設定は、この現場で絶対に安全で、かつ適法だと言い切れるか?」 と。