【違法の罠】花火を抜けるドローンの闇。「イベント上空」許可に潜む7m/s制限とDJI機の現実

夏の風物詩である花火大会や野外フェス。最近、打ち上がる花火の中を猛スピードで駆け抜ける、ダイナミックなドローン空撮映像を目にすることが増えた。 「夜間飛行」「目視外飛行」、そして「イベント上空(多数の者の集合する催し場所の上空)」の許可・承認さえ取れば、あのような飛行が合法的にできると思い込んでいる操縦者がいる。

しかし、そこに大きな落とし穴がある。申請時に添付した「飛行マニュアル」に記載された絶対条件を見落とし、無自覚に航空法違反を犯している「自称プロ」が後を絶たないのだ。

「飛行速度+風速=7m/s未満」という絶対ルール

以前の記事でも触れたが、許可・承認申請時に添付した飛行マニュアルの内容を遵守しない飛行は、即座に航空法違反となる。 イベント上空の飛行において、標準的なマニュアルで承認を得た場合、審査要領に基づき「7m/s以上の飛行は行わないこと」と定められている。つまり、飛行速度+風速=7m/s未満であることが絶対条件なのだ。 完全な無風(風速0m/s)の環境であったとしても、許される飛行速度の上限は7m/s未満(時速25.2km未満)に制限される。

しかし、花火の中をダイナミックに突っ切る映像などでは、常に15m/s(時速54km)以上は出ている飛行となっている。もし、独自マニュアル等で特別な安全対策を講じることなく、標準的な制限速度を超過して飛ばしていれば、それは立派な違法飛行である。

審査要領が突きつける「上限解除」の厳しい条件

では、この7m/s未満の制限を超えて合法的にイベント上空を飛ばすことは不可能なのか? 「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(5-6)」によれば、この速度制限(5-6 (1) c) オおよびカ)を解除し、より速い速度で飛ばすための条件として、以下のいずれかの安全対策を講じることが求められている。

  • 機体を係留装置で繋ぐこと
  • 落下を防ぐネット等を設置すること
  • 【製造者等による落下距離の保証】と【その落下距離に応じた立入禁止区画の設定】の両方を同時に満たすこと

現実的に考えて、花火の空撮などで係留やネット設置は不可能に近い。となれば、残る手段は「メーカーによる落下距離の保証」を得た上で「立入禁止区画を確保する」という、2つの条件をセットで完全に満たすことしかないのだ。

DJI機運用における「メーカー保証」の壁

ここで、市場の多くを占めるDJI製ドローンを使用している操縦者が直面する構造的な課題がある。 現在、DJI社はイベント上空における「落下距離を保証する資料」の発行を行っていない。 前提となるメーカーからの保証資料が得られない以上、どれだけ広い立入禁止区画を用意しようとも、この規制緩和条件(両方の充足)を満たすことは不可能となる。

結論として「一般的なDJI機を使用する場合、標準マニュアルの規定通り、イベント上空で飛行速度制限(風速と合わせて7m/s未満)を超えることはできない」のである。

許可書は免罪符ではない

「許可・承認書を持っている」ことは、決して何をしてもいいという免罪符ではない。自らが提出し、国と約束した飛行マニュアルの細部(飛行速度や風速の制限)まで完全に把握し、現場の状況と機体の法的な限界を照らし合わせてフライトを制御すること。それができないのであれば、イベント上空という最もリスクの高い空域を飛ばす資格はない。

華やかな映像の裏側にある「法と安全の境界線」。今一度、自身の許可書に添付されたマニュアルを開き、その重みを確認してほしい。